オフィスワーカーのライフスタイルは、昨年の第一波から瞬く間に一変しました。しかし、この変化はオフィス環境にとって必ずしもデメリットばかりではありません。コロナ禍の今だからこそチャレンジできるオフィスデザインについて考えてみてはいかがでしょう?
目次
1.感染対策
コロナ禍におけるオフィスデザインにおいて、もっとも重視しなければならないのが“感染対策”。アクリル板やビニールカーテンの設置、こまめな換気、消毒の徹底etc…今では導入していない企業のほうが珍しいくらいですね。
今回のコロナ禍で、売上に多大な影響を受けた業界もあるでしょうし、出社率が低下して生産性に不安を感じている企業もあるでしょう。しかし経済活動はマンパワーあってのことですから、まず従業員の健康面を第一に考えねばなりません。
さて、国からの要請では「出社率30%」や「時間差通勤」などが挙げられていますが、みなさんのオフィスにおける達成率はいかほどでしょう?業種や部署によっては、なかなかリモートワークだけで仕事を進めていくことが困難な場合もあります。
ひとことに“感染対策”といっても、従業員数やオフィスの間取りによってさまざまなパターンが考えられます。そこでまずは、ビフォアコロナ時の出社率を100%とし、そこから現在何%ほどまで減ったのかを考えてみましょう。
企業全体のみでなく、部署ごとの率を出すことにより、どのようなオフィスデザインがふさわしいかが見えてきます。
2.「島」の廃止。ソーシャルディスタンス重視
出典:https://www.businesswest.co.uk/
オフィス内での「ソーシャルディスタンス」を保つべく、さしあたって各企業が率先したであろう「島」の廃止。従来のオフィスでは、1つの部屋内において、細かい部署やチームごとに机を向かい合わせて並べる「島型」配置が一般的でした。
島型のメリットはなんと言ってもコミュニケーションの取りやすさと、動線の確保がしやすいこと。しかし残念ながら、このデスク配置はコロナ禍において感染リスクが高いため、淘汰される運命となりました。
無論、島型を保ちながら各個人のデスク周りにアクリル板を設ける方法もありますが、サイズや設置方法によっては通気性が悪くなってしまうこともあり得ます。
そこで「島」の廃止で対策となるわけですが、よくあげられるのが
・スクール型レイアウト(学校のようにみなが同方向を向くように配置)
・背面式レイアウト(壁に向かうなど、背を向け合うように配置)
・対角線レイアウト(正面に人がいないように斜めに配置)
とは言えど、限られたスペースでどう配置すればいいのやら…と頭を悩ませる間取りもあるでしょう。
そこでまずは
・現在の出社率
・無駄なスペースや什器の見直し
をチェックしましょう!
出社率が低下していればおのずと使っていないデスクが増えます。また、今まで放置されていた什器で、案外使っていない無駄なものが占拠していたりしませんか?
これらを省くことにより、ソーシャルディスタンスを確保したデスク配置が可能なスペースを生み出しましょう。
3.フリーアドレス
コロナ禍以前より、グローバル化や「働き方改革」の影響でブームとなった「フリーアドレス」スタイル。固定のデスクにとらわれず、都度違う場所で仕事ができるため、
・グループorソロ作業に合わせ効率的に動ける
・新たな発想の転換
・適度なリフレッシュがしやすい
などの理由から一躍人気となりました。
コロナ禍においても「脱・島型」のきっかけとなったり、個々でソーシャルディスタンスを確保できるという点においてメリットがあります。しかしこの「フリーアドレス」も、コロナ感染予防対策としては注意しなければならないポイントも。
まずフリーアドレス制の大きな利点である「移動の自由さ」は、時として不用意な人の流れを作り出す恐れがあります。自治体・企業によっては万一感染者が出た場合、「濃厚接触者」を可能な限り特定しなければなりません。
この際、フリーアドレスで「いつ・誰が・どこにいたか」が分かりにくくなってしまうのは重大なデメリットと言えるでしょう。そこでフリーアドレスと併用したいシステムが「ホテリング」。
「ホテリング」とは、座席管理システムを用いて“今日は誰がどの席を利用するか”を把握する、いわば予約型フリーアドレス。ビフォアコロナより多少不便にはなるものの、ホテリングを導入すればフリーアドレス制の魅力をじゅうぶんに活かすことが可能です。
4.スタンディングワーク
「スタンディングワーク」とは、文字通り立って仕事をすること。従来の常識を覆すスタイルなので、最初は驚いてしまうかもしれません。ですが、長時間椅子に座っていることにより、かえって疲労が蓄積するなど、健康面を損なう面もあるのです。
ゆえに少し前から海外で取り入れられるようになり、近年は日本にも浸透し始めてきています。人間は長く座りっぱなしでいると、下半身の血行が鈍ってしまい、結果的にふくらはぎの筋力低下や動脈硬化などのリスクをもたらします。
さらにコロナ禍である現在は、例え出社していたとしても会議や営業活動(外回り)もリモート化され、従来よりも着席している時間が増えがちに。もともと「スタンディングワーク」には眠気防止や猫背対策のメリットがありましたが、着座時間が増えた今、ウィズコロナにおける新しい働き方としても注目を浴びています。
「スタンディングワーク」を上手におこなうコツは、まず専用のスタンディングデスクを導入すること。疲労や姿勢の悪化を防ぐためにも、使用者の身長に適したものを選びましょう。
ただし注意したいのが、あくまでスタンディングワークは1日中やっていればOKということではない点。立っていることで疲労を感じたら椅子での作業に切り替えるなど、1日の中でもメリハリをつけてこそその魅力を最大限に発揮できるもの。
スタンディングデスクにはさまざまなタイプが発売されています。比較的安価に入手できるのは高さ固定式のデスクですが、身長や腕の位置にフィットしないものでは意味がありません。
体の調子や状況に応じて座ることもできるよう、高さ調節の可能なタイプがオススメです。また、従来型デスクの天板上に後付けで設置できるタイプもあるので、寸法やレイアウト次第では既存のデスクを起立・着座兼用にアレンジすることもできますよ。
5.スモールオフィス
出典:https://homeworlddesign.com/
デスク配置の見直しやパーテーションの導入もおおいに有効ではありますが、やはり同一空間内の人数を減らすことこそが、感染対策の一番の近道です。ある程度社内のICT(情報通信技術)を充実させることができるなら、思いきってオフィスを複数のスモールオフィスに分けてしまうのがベスト。
いくつか小さなオフィスを設け、部署ごとに分散させたり、現在進行中のチーム専用として使用するのです。「スモールオフィス」というと従来はスタートアップ企業や企業したてのベンチャー企業など、もともと1人~少人数の会社が使用するイメージでした。
しかし、少人数企業はいち早く在宅ワークへ転換することができたため、現在ではそうした層に需要があったレンタルオフィスの空室が増加傾向にあるのです。
近年のレンタルオフィスは大抵インターネット回線等のインフラが完備されているので、入居後すぐにICTを駆使して仕事を始められるのが魅力。レンタルオフィスの空きが増えた今こそ、自社の出社率に見合ったコストや立地の物件を見つけやすいベストタイミングであると言えるでしょう。
6.まとめ
出典:https://www.burohappold.com/
いかがでしょう?たとえ出社が必須になってしまう業種であれ、工夫次第では安心して働けるオフィスに変身させられる…こんな点も、オフィスデザインの奥深さの1つです。
また、新型コロナウイルスが騒がれるようになってから、従来のインフルエンザ感染率が下がったという情報も目にします。これは間違いなく人々が“マスク着用・消毒・うがい手洗い”などの感染対策を徹底するようになった功績と言えるでしょう。
これを踏まえると、今はコロナ禍のためと思って実践している工夫は、アフターコロナの世の中でも決して無駄になることはありません。「人生100年時代」と謳われる現在だからこそ、どんな状況下でもQOLは欠かしたくないものです。
個々の注意だけでなく企業側も従業員を守れるよう、「新しい生活様式」に向けたオフィスデザインにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?