我々日本人の大半にとっては、フリーランスの方をのぞいて、会社員の方にとっては珍しいものでした。本来のメリットよりも、「コロナ対策」として一躍有名になった労働スタイル。ですがテレワークありきでも、やはりオフィスの存在は企業にとって必要不可欠です。
目次
- 1.小規模でもいいので、ベース(拠点)となる場所が必要
- 2.いざというとき、社員が集まれる場所が必要
- 3.対外的に企業の信用度を誇示する意味でもオフィスは必要
- 4.オフィスが不要と思われる業態とは?
- 5.考察:このままテレワークが一般化するのだろうか?
- 6.結論:やっぱり企業にはオフィスが必要だ
1.小規模でもいいので、ベース(拠点)となる場所が必要
規模に限らず、企業である以上ベース(拠点)はなくてはならない要素です。たとえ少人数であっても、自宅であっても、働く場所である以上そこがあなたの“オフィス”です。使用する機材の数はまちまちで、中にはPC1つですべてをこなしてしまう方もいるかもしれません。でも、例えノートPCやタブレットであっても、ビジネスに欠かせない大切な機材ですね。
そういった類のものが揃う場所こそ、紛れもなく企業のベースとなるわけですから、明確な拠点がないという事態はほぼあり得ません。普段、コワーキングスペースなどを利用することが多いにせよ、“定位置”があってこそ、世に知らしめることのできる“企業”としての顔が成り立ちます。
また、“テレワーク=情報が点在している”点も念頭に置く必要があります。もしその情報が高いセキュリティレベルを求められる重要機密であったならば、従業員個々が持ち出すのはいささかリスキー。やはり拠点は必要不可欠となるのです。
2.いざというとき、社員が集まれる場所が必要
LINE WORKS、ZOOM、べルフェイスetc…離れていても、オンラインを介して社員間のコミュニケーションや商談がこなせる時代。いずれのサービスもリアルタイムで通じ合うことが可能ではありますが、日々仕事をしていると、どうしても手に取って確かめたいモノや、直接その目で触れたいモノもありますね。
こう考えてしまうと、まだまだリモートワーク後進国である感じは否めません。ですが、ここ数か月でリモートワークに対する意見をつのると、やはりいざというときは、社員が集まれる場所が必要であることが実状です。
しかしこれは必ずしも懐古的な理由だけで指摘されているわけではなく、リアルならではの人と人とのつながりを求めた結果であり、人間という生物として至極自然な欲求でもあるのです。
もちろん今は極力他者との接触を避けるべきときではありますが、「いざとなれば集まれる場所」があるだけで、絶対的な安心感が生まれるでしょう。その都度、レンタルオフィスを借りるのも手間ですし、なんだか落ち着きませんよね。
3.対外的に企業の信用度を誇示する意味でもオフィスは必要
出典:https://meritinteriors.com.au/
もし新しいクライアントを探さなければならなくなったとします。当然、企業側でもそのクライアントの情報収集をしていくことになるわけですが、もしそこで、先方の所在地が不明瞭であったなら、どう思うでしょう…?
もちろん中には、電話番号とメールアドレスだけしか公開せずとも、クオリティの高いことで評判を得ている企業も存在します。しかし、まだまだ「住所がない」ことに対して、ビジネスの世界はそれほど寛容ではありません。
需要が伸びているレンタルオフィスでも、ブランド力のある住所が決め手で契約したというユーザーは数知れず。東京においては、やはり千代田区や港区の住所を取得できることが強みです。
かつ、そのオフィスに人の気配が感じられ、いざとなれば訪問可能であればあるほど、より信用度は増してゆきます。たとえテレワークが大半であったにせよ、企業の顔としてオフィスの有無は非常に大きなメリットをもたらします。
大なり小なり、“見栄”も商戦の一種なのです。
4.オフィスが不要と思われる業態とは?
出典:https://meritinteriors.com.au/
「それでも今こうしてテレワークができている。オフィスなんて不要だ」
こうした意見が多いのは、主としてクリエイター業やエンジニア業の方々です。その他、俗にいう『ホワイトカラー』の職種であれば、かなりの業態がテレワークのみでも業務を遂行できる可能性を秘めています。
自身のノウハウと相応のスペックを備えたPCさえあれば、場所を問わず働けるのはごもっともと言えるでしょう。コミュニケーション面に関しても、複数チャンネルを駆使すれば、別件の会話を同時進行させることだってかなうのですから、オフィスにいるときとほぼ同等のパフォーマンスが発揮できます。
そうなってしまうと、オフィスを構えることは、無駄な経費を生み出すだけ、無駄な通勤時間が増えるだけ、と思えるかもしれません。今日日、コロナ禍による経済的不安も増しつつある中、コスト削減に取り組むならば当然オフィスの賃料・維持費も槍玉に上がってしまうでしょう。
改めてオフィスの必要性について、考えなければならない時代に直面していることは間違いなさそうです。
5.考察:このままテレワークが一般化するのだろうか?
以前もお話したように、テレワークにはメリット・デメリット双方あります。良くある未来の話をすれば、最終的には生活に関わるほとんどの労働力がAIに取って代わられるかもしれないわけで、オフィスの必要性低下もその序章と言っても過言ではありません。
しかし、速いと思える技術の進歩も、一般市民の日常へ浸透するには意外と時間を要するもの。まだまだマンパワーがなくてはならない時代です。現に、緊急事態宣言が解除されたとたん、テレワークから出勤型の業務形態に戻した企業が一体どれほどあったでしょう。
新しい生活様式を求める中でも、「出社」を選択した企業が大半を占めています。「もしかしたら別にテレワークでもいいのかもしれない」そんな思いがありつつも、やはり国民性とでも言いましょうか、会社に行ってこそ仕事になるという思想はまだまだ続くものと思われます。
現在、社会人の中で“デジタルネイティブ”と呼べる層は、まだほとんどが新入社員~中堅手前くらい。本当の意味でテレワークが一般化する時代が来るのは、もう十数年先となるかもしれませんね。
6.結論:やっぱり企業にはオフィスが必要だ
出典:https://www.glasscubes.com/
今、本当に必要なものはなにか…それを見極めなければ簡単には生き残れない時代に突入しています。低迷している経済をいかにして盛り上げていけばよいのか、未来の働き方とはどのようなものなのか、錯綜の中で生きるのは実に悩ましい問題。
私たちオフィスデザイナーも、日々時代に沿ったオフィスの在り方を模索しなければなりません。時の流れとともにオフィスの使われ方は変わってゆくことでしょう。
しかし、その必要性は決してなくなることはないと断言します。
どのような業種であれ、いつ誰が訪れてもいいオフィスがあるだけで、社会的信頼を得られるのはもちろんですし、オンラインのみに頼り切らず、人と人との直なふれあいもビジネスには欠かせない要素だと考えているからです。
WEB上でも完結してしまうことと、そうでないこと。大切なのは1つの流行だけにとらわれない柔軟性。目で見て、手で触れることのできるオフィスという存在は、ホームページだけでは表現しきれないリアルならではの味を醸し出すことがかなうのです。
斬新なビジネススタイルにもアンテナを張り巡らせつつ、従来の様式の良い点にも目を向け、オフィスワークとテレワークの両立を図ることこそ、どんな逆境にも負けない礎となるに違いありません。