1.オフィスと生産性の関係
生産性といっても何の生産性なのか、それは多岐にわたります。たとえば、「労働生産性」、つまり従業員一人当たりがどれだけ付加価値を生み出しているかであったり、最近では「知的生産性」と呼ばれる、オフィスの中で知的成果物を生み出す効率指標だったりします。労働生産性の場合、作業スペースの位置、書棚の位置など高効率を実現するために作業内容や社員同士の打ち合わせスペースなどを考慮したりします。また知的生産性であれば新しいもの創造したり、アイデアなどを出し合うスペースなどがその一例でしょう。最近では、ノマドワーカーという言葉も多く聞かれるようになり、仕事の場所を選ばないという文化も定着しつつありますが、社員が集まるオフィスの重要性を理解し、こだわりを持っていらっしゃる経営者様も多く存在するのが事実です。オフィスは生産性を重視する無機質的な場所ではなく社員、経営者など関わる者の全てを巻き込み意思統一する大切な場所であり、ホームなのかもしれません。
2.オフィスの知的生産性は測れないのか?
「工場の生産性であれば、出荷量と原価、さらに歩留まり(原料に対する 商品の出来高の割合)などの具体的な数字から、すぐに測定ができます。 これに対して、知的生産性を数値に表すのは非常に難しい。このため、 オ フィス学会で生産性評価の研究を始めるときに、それまでどんな調査 や報告がなされてきたのか、国内外の情報を集めてみたのですが、オフ ィスづくりの参考になるようなデータは、まったくといっていいほど なかったのです」
従来、上記の通り知的生産性を測定するのは困難でした。しかし、単に労働生産だけが仕事ではなく、これからの日本は知的生産物を作り出し世界に出て行くことが課題となっており改善して成果を測定するというファシリティマネジメントが急務といなっているのです。
3.知的生産性測定の確立
ある研究では以下の2つが生産性測定に関する重要な要素と言われています。
・IT環境→ハードウェアだけでなく、情報や知識の共有化などのレベル
・オフィス環境→ワーカーに対するサービス
IT環境は、ハードウェア、ソフトウェア、ユースウェア(運用管理)、セキュリティーの面から、オフィス環境はスペース、設備、運営ルール、安全、健康についてなどの面から分析を行い、知的生産性の測定は可能となっているのです。
4.企業にとって生産性向上は必要?
ここに興味深い調査報告があります。経営者に「人に関する最大の課題 は?」と尋ねてみると、「優秀な人材の維持」との回答が最上位になります。 ところが、続けて「それでは、優秀な人材が辞めてしまったケースで、その 転職先は?」と聞くと、そのほとんどは同業種の競争相手に移ってしまっ ているのです。 つまり、ワーカーが転職する主な理由は、決して「仕事を変えたい」のでは なく、「職場を変えたい」のです。 さらに別の調査によると、優秀な人材ほど仕事の成果による自己実現を 望み、「働くために最も効率のいい場所を選択して働く」「最も働きやすい時 間を仕事に割り当て効果的に働く」ことで満足感、幸福感を得ようと考えて います。そして、仕事に面白さを感じ、しかも多様な人材との協働が可能な 環境を求めているのです。 このような人材の流出を防ぎ、それまでの投資を無駄にしないためにも、 経営側は働く環境を整えなければなりません。 快適なオフィス環境と整備された情報環境は、働きやすさに、直結するフ ァクターです。だからこそ、今あるオフィスの生産性を計るだけでなく、 オ フィスが生産性に与える影響を見つけだす必要があるのです。 生産性の高い職場は、ワーカーの幸福感につながり、優秀な人材の維持だ けでなく、モチベーションの向上を実現します。そして、企業にとって最も 大事な「人の問題」を解決する要因であることに、すでに多くの経営者が気 づき始めているのです。
生産性を向上させるには社員のモチベーションが大きく影響しているのは間違いないでしょう。その結果は企業は投資を人件費などに使っていきます。 しかし最近では、社員のあげる成果は給与だけで決まるものではないという研究結果もあります。給与だけではモチベーションをコントロールできないということです。職場の仲間との良好な関係を示す組織的満足度、自分の生活が豊かになる個人的満足度、社会貢献よくを満たす社会的満足度の3つバランスが重要なのです。