時代の変化を見据えてオフィスを構築するべき

1. オフィス面積は減る方向へ?

オフィスビルやオフィス空間を計画・設計していく上で、オフィスが必ず必要とする面積について検討することが重要です。将来的なオフィスの面積がどのように変化していくか。あるいはどのように発想を変えていくべきなのかについて考えてみましょう。
ICTの進歩と普及により、どこでもいつでも働くことのできる時代になりつつあります。自宅であろうと街中の喫茶店であろうと、組織が管理している情報や仲間たちといつでも繋がった状態で働くことができます。
人が集まるための受け皿であったオフィスは、集まる必要が薄らげばその必要性が低下していきます。オフィス不要論は極端すぎるかもしれませんが、これからのオフィスはその姿を徐々に変えていくことは間違いありません。オフィスは今まさに、変換点を迎えているのです。

2. オフィススペースを変化させる3つの要因

オフィススペースは社会の動向を受けて企業がそれらに対策を講じた結果として変化します。社会の動きは多々ありますが、そのなかで最終的にオフィススペースの変化に強い影響を及ぼすものとして、ここでは「少子高齢化の進行」「モバイル&クラウドの進展」「独創性と迅速性の企業が希求」の3つを取り上げます。これらを受けて、企業が事業の進め方を変えると仮定して、オフィスに必要となる面積を予測してみましょう。

2-1. 少子高齢化の進行

世界でも有数の少子高齢化社会である日本では、企業も育児休暇制度や介護休暇制度などを導入して対応しようとしている。しかし、現状の育児休暇取得率をみると、女性は87.8%と高いものの、男性はわずかに2.6%にすぎません(厚生労働省調べ)。
介護休暇の取得率に至っては男女合わせて0.14%であり、制度を導入しただけで運用が伴っていないことがわかります。(厚生労働省『平成23年度雇用均等調査』)
こうした現状に対応するために、企業は育児や介護を必要とするワーカーに休暇を与えるだけでなく、自宅もしくは自宅の近辺で執務させる制度を設けていくことが予想されています。より柔軟で現実的な少子高齢化対策を平行して進めることによって、必要とするオフィスの場所や面積が変化していくものと思われます。

2-2. モバイル&クラウドの進展

ICTの進歩が目覚しいです。今後はさらに端末機の小型化が進むでしょう。すでにたぶれっとPCの出荷台数はノートPCを上回っており、2020年ごろまでには大半の端末機がタブレット型になるとの予測もあります。
一方データの管理・保管の綿ではクラウド市場の伸びが著しいです。特に企業が独自で設けるプライベートクラウドは、これまで主流であったコミュニティクラウドを今後逆転し、大きく成長していくものと思われます。
モバイルとクラウドを手に入れたワーカーは企業から自律的な働き方を認められたものからオフィス以外でも働き始め、働く場は分散していくだろうと予想されます。自宅や自宅周辺、オフィスの近辺、顧客の近くなど、最も効率的に仕事を遂行できる場で働くことを企業側が推奨する時代が到来します。

2-3. 独創性と迅速性の希求

商品ライフサイクルの短期化も今後のオフィススペースに影響を与えそうです。ヒット商品の寿命を調べた調査によれば、1970年代には5年以上の寿命を持つ商品が全体の6割以上を占めていましたが、2000年代で社1割以下になり、反対に2念イカの寿命の商品が5割を超えたそうです。
この調査結果を見るまでもなく、長寿命の商品がへりつつあることは実感として感じられるのではないでしょうか。こうしたなkで、企業が生き残るためには、次から次へと新商品や新事業を開発し続けなければなりません。しかも、他にはない独自性が求められています。
新商品開発や新事業の立ち上げにおいて「迅速性」と「独自性」は今後ますます重要になってくるでしょう。それには、コレまで以上に外部の知見を導入する必要があります。多用な視点で開発を進めることで、商品に独創性を持たせることが可能になるからです。
外部のチを適宜導入するプロジェクトを迅速に立ち上げ、巧みに機能させていくことがこれからの企業の浮沈を握っていると言っても過言ではありません。

3. 今後のオフィススペースの変化

社会的な動向と企業の対応について触れてきましたが、それらを受け入れてオフィスはどう変わるのでしょうか。オフィスの面積の今後の推移について考えてみましょう。

3-1. センターオフィスの面積は減り、分散先の面積が増える

「少子高齢化の進行」と「モバイル&クラウドの進展」からテレワーク人口が増え、オフィスの就業者人口は減少し続けていくことは間違いありません。
国土交通省によれば、2012年度のテレワーカー(雇用されている人間で週8時間以上オフィス以外で働く人)はすでに全労働右車数の20%を超えています。2030時点の予測は出ていませんが、オフィス外で働く人口は増え、オフィスに出社しない時間が増加する流れは続いていきそうです。
これに伴って、オフィスにおける在籍率が減少するため、企業が必要とするオフィス床面積は減少するものと思われます。控えめに見ても、これまでのオフィスの面積の1~2割程度削減しても充分に需要をまかなえるのではないかと推測されています。
ただし、働く場所の分散は面積的には効率性の悪化を引き起こします。いわゆるセンターオフィスそのものの面積はコンパクトになるものの、分散先の面積の総和は現在よりも大きくなると思われます。

3-2.オフィスの空間構成比率が変動する

「独創性・迅速性の希求」で述べたように、企業が存続・発展していくためには新たな事業を企て、有望な製品やサービスを開発し続けなければなりません。そのためには社外の有識者やその道の専門家、ターゲットとする消費者との協業を積極的におこなうことが、これまで以上に重要な戦略となるでしょう。
このような外部の人達を自社に招きいれる器を上手く設けることが、今後のオフィスデザインの大きなポイントとなります。社外の人たちを引きつける魅力あふれる空間とその運用体型を整えたところが、市場の優位性を獲得できる時代に成るのです。
従来のオフィス空間では、外部の人間が立ち入れる領域である「受付・ロビー」空間が占める割合は全体の1割にも達していませんでいた。しかし、今後はこの部分が大幅に拡大するものと思われます。2030年のオフィスは、多様な人達が集まり、語らい、ビジネスを画策していく場であり、日本家屋の縁側のように外と内とをつなぐ役割、つまり社外と社内の中間的な領域として機能する「サロン」的な空間を充実させなければなりません。

一方で、執務空間はもっとも減少率が高いです。テレワーク人口の増加でオフィスの就業者数が減るうえ、常時在籍することが必要なスタッフ以外は固定化されたデスクを持たず、その日そのときの仕事に最適な共有席を各自が選んで働くようになるからです。

4. 「与えられるもの」から「自分たちで創りあげるもの」へ

企業によってオフィスの役割は異なるため、すべてのオフィスがこのようになるわけではありません。しかし、将来的にオフィスで働く人が減少することや、オフィスが情報処理を目的とする空間から他社との協創を主な目的とする空間へ向かうという方向性はほぼ間違いないでしょう。
ただ、変わらないこともあります。オフィスは常にワーカー一人ひとりの営みを適切に支援する場でなくてはなりません。また、ここまで「社会が変わり企業が変わった結果、オフィスが変わる」という展開で話を進めてきましたが、最終的には働き手の意識転換も必要です。オフィスは「会社から与えられるもの」ではなく「自分たちのもの」「自分たちで創っていくもの」という意識に転換すれば、理想のオフィスが見えてきます。そうしたワーカーが増えれば、オフィスは無味乾燥な空間から豊かで実り多い環境にかわるはずです。
近い将来、ワーカー自身の手と意識改革によってオフィス環境が変わっていく時代になるでしょう。そのときのオフィスデザインが、そうした意欲的なワーカーの要望を叶えるものになっているよう、私たちも日々努力してゆきます。

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