快適の感覚は、年齢・性別・業種によって違います。したがって、全員の意見を取り入れることは無理としても、スタッフの中の適任者をリーダーにして意見を取りまとめることで、最大公約数の快適を求めることができます。
では、スモールオフィスのデザインには、どのような人が適任なのでしょうか。スモールオフィスのデザイン、適任者選定のポイントをみていましょう。
スモールオフィスのメリットから考える快適の定義
小さなスペースのオフィスは、「狭い」ということで制限があるように思われがちですが、「狭い」という制限があるからこそ生まれるメリットもあります。
まず、小規模ということは揃えるデスクや棚など少なくて済みます。照明や空調なども多く用意する必要がありません。初期費用や経費を少なく抑えられるため、人間工学に基づいた疲れにくいオフィス家具に費用をかけることができます。
さらに、デザインを統一しやすいというところもメリットです。デスクや棚のカラーやデザインなど、オフィスのコンセプトに合わせてレイアウトが比較的簡単です。集中力やモチベーションアップにもつながるでしょう。
また、小さいスペースにスタッフが共に仕事をするということで、コミュニケーションが生まれやすくなります。仕事の効率を上げモチベーションの向上には、コミュニケーションの有無が影響するといいます。チームという意識も生まれ、スタッフ一丸となって業務を進めることができるでしょう。
メリットの裏にはデメリットも?スモールオフィスデザインのポイント
スモールオフィスのメリットは、デメリットになる要因も含まれています。
小さなオフィスのレイアウトは、大きなオフィスよりも自由が利きスタッフの好みを取り入れやすいものではありますが、少人数では誰かひとりの好みになる、または誰かが我慢をする状態になりがちです。
また、コミュニケーションが生まれやすいスペースは、プライベートが守られにくいスペースでもあります。フリースペースを作ることができない広さの場合は、常に業務状態となり、コミュニケーションがストレスの元となってしまう可能性もあるのです。
そこで、スモールオフィスのレイアウトを考える時、メリットとデメリットの両面をイメージすることで使いやすいオフィスになります。 コミュニケーションが取りやすく、且つある程度視線を防げる工夫、ほっと一息つける時間や場所、誰もが使いやすい動線など、スペースも人数も小規模だからこそ、誰かが我慢や不便を感じないデザインが必要なのです。
価値観が違うスタッフ同士で使いやすいオフィスを考える
では、どのような人にデザインを任せることで誰もが使いやすいオフィスとなるのでしょうか。これは、業務や男女の比率にもよりますが、ひとりに任せるのではなく、価値観の違う二人以上で考えると、それぞれに使いやすいデザインが見えてきます。
例えば、同性だけのオフィスでは問題がないことも、ひとりでも異性がいれば何かしら具合の悪いところが出てきます。比率に関わらず、男女のペアで考えることが大切です。
特に、女性にとってお手洗いについてはデリケートな問題なので、使い勝手や場所が悪くてもいいづらいことがあるでしょう。女性の悩みは、男性にはわかりづらく想像できないものです。女性がいれば、デスクとお手洗いを離す、パーテーションで仕切る、音が気にならない工夫をするなどの意見を反映することができます。
営業などの外回りと、オフィスワーク、クリエイティブなどの業務の違いでも快適のポイントは違います。この場合は、コミュニケーション重視か、プライベートな空間の必要性など、どちらも考慮したレイアウトを考えることが必要です。
スタッフの中にクリエイティブな業務を専門とするスタッフがいる場合、集中できるスペース確保を考えましょう。パーテーションで仕切った空間を作ることが難しい場合は、サテライトオフィスや在宅勤務など、働き方の選択肢を広げる必要が出てくるかもしれません。
オフィスデザインを考える時、オフィスのボスにあたる人物はアドバイスにとどまることが懸命です。管理者は、どうしても管理しやすい、自分がまとめやすいデスクの配置にしがちです。ボスの意見に反対意見は伝えにくく、管理者だけが満足するオフィスデザインになってしまっては本末転倒です。業務の中心はスタッフなのです。スタッフが快適であるオフィスが、結果的に生産性の高いオフィスとなることを忘れてはいけません。
筆者も、スモールオフィスで契約社員をしていた時に、デスクの配置でストレスがマックスになったことがあります。上司は「作業でわからないときにアドバイスができるように」という親切心で、筆者の真後ろにいたのですが、距離が近いうえに常に背中から監視されているようで、4日で我慢が出来なくなり在宅勤務となりました。
また、スタッフの中の女性は、お手洗いに行く姿が見えるのが嫌ということで、ランチタイムにコンビニのトイレを借りていました。これらは、男性だけでは想像できないことかもしれません。
少ない人数ならば、オフィス環境の不満は言いづらいものです。小規模だからこそ、それぞれの価値観をすり合わせて、最大公約数の快適なオフィスをレイアウトしたいものです。