目次
- 1.改めて「ソーシャルディスタンス」とは?また、その定義は?
- 2.ソーシャルディスタンスを重視したオフィスをデザインする必要性は?
- 3.ソーシャルディスタンスを重視したオフィスをデザインするメリットは?
- 4.ソーシャルディスタンスを重視したオフィスをデザインするポイントは?
- 5.5.オフィスデザインのプロに依頼すべきか?
もうすっかりなじみ深いキーワードとなった「ソーシャルディスタンス」。social(社会)+distance(距離)の英単語からなる「社会的距離」を示す言葉です。
このたびの新型コロナウイルス(COVID-19)大流行により、人から人への感染を避けるために提唱され、世界的に浸透しました。「濃厚接触者」に関しても、国では「発症の2日前から、1メートル以内で15分以上接触した人」と定義しています。
医学的な調査によれば、マスクがない状態での飛沫の飛距離は以下の通り。
・呼吸 0.5メートル
・普通の会話 1メートル
・せき 2~3メートル
・くしゃみ 5~7メートル
せき・くしゃみはエチケットの向上もあり、個々で飛距離を抑えることができますが、一般的なコミュニケーションを取るうえでは、最低でも1メートル、理想としては2メートルほど他者との距離を取ることが重要とされています。
また、同じように広く認知された「3密」も、感染リスクが高いとされる「密閉・密集・密接」を避けましょうというもの。つまり、お互いの飛沫を避け合うための距離をとる行動が「ソーシャルディスタンスをとる」ということになるのです。
2.ソーシャルディスタンスを重視したオフィスをデザインする必要性は?
「ソーシャルディスタンス」=「社会的距離」ですが、あくまでこれは物理的な距離を取るという意味であり、社会的関係(コミュニケーション)を断てということではありません。
テレワーク化したとしても、オンライン上で仲間との交流は必須ですし、物理的な距離を保ちながらも、我々は必ず誰かと協力し合っていかなければなりません。
足を運ぶ回数は減ったとしても、オフィスの存在はやはり企業の重要拠点。出社の必要があるときも、安心して働ける場所であってほしいもの。
気温の低下や Go Toキャンペーンの影響など諸説ありますが、各地における感染者数は再び増加傾向にあります。令和元年11月現在、日本でも第三波と呼ばれる感染が広がりつつあり、これから年末に向けてとても心配な状況です。
専門家による終息についての議論もまだまだ不明瞭な状況ですから、オフィス側は長期戦を想定したデザインを採用しておいたほうが賢明です。
3.ソーシャルディスタンスを重視したオフィスをデザインするメリットは?
今は特別「新型コロナウイルス(COVID-19)」対策として重視されている「ソーシャルディスタンス」。冒頭では飛沫の飛距離について触れましたが、なにも飛沫感染で拡がるのは新型コロナだけではありません。
毎年冬になると必ずといっていいほどニュースに取りざたされるインフルエンザも、同じように人から人へ感染・蔓延してゆくウイルスです。子どもの場合、インフルエンザに罹ったと判明した際は、学校保健安全法により強制的に出席停止とさせられます。
しかし、社会人ともなると中には自己判断で我慢してしまう人も多く、結果的に社内に広めてしまうケースが後を絶ちません。無論、企業側にはインフルエンザ感染社員に出社禁止命令を出すことは可能ですが、あくまで本人が医師からインフルエンザと診断されていなければ、なかなか判断が難しいところ。
企業単位でワクチン接種をしている会社もありますが、これも任意であることがほとんどで、また体質的にワクチンが打てない人も存在します。感染した本人が辛いのはもちろんですが、病欠の社員が発生したことによる業務分担も、周囲の社員の負担となりますから、やはりあらかじめ感染症そのものを防げるオフィス造りしておくことには、大きなメリットがあると言えるでしょう。
4.ソーシャルディスタンスを重視したオフィスをデザインするポイントは?
ソーシャルディスタンスを重視したオフィスデザインのポイントとして、まず一番の問題はデスク配置です。限られたスペースに多くの従業員を収容するという点においては、島型が最も理想的ではありましたが、島型配置のままソーシャルディスタンスを保とうとなると、閉鎖感の強い仕切りを設置せざるをえなくなり、景観や居心地の良さを損なってしまいます。
そこでオススメなのは以下のようなレイアウト。
・スクール型レイアウト
その名の通り、学校の机の配置のように全員が一方を向くようにデスクを配置します。一部屋における従業員数が多い場合、この方法が最も対面リスクを避けるのに適していると言えるでしょう。
・背面式レイアウト
すべての座席を壁に向けて設置します。これでも対面を避けることが可能となり、飛沫感染を防ぎやすくなります。
ただし広さによっては空間の真ん中を無駄にしてしまいますので、その場合はうまく空きスペースに共有機材や収納を設置したり、スクール型の応用で部屋中心からデスクを左右に振り分けるように設置するとよいでしょう。
・対角線レイアウト
島型から対角線状にデスクを減らしていくイメージです。正面からは人がいなくなりますが、斜め前には誰かがいる状態なので、適度に他の社員の顔を見ることが可能となります。
・フリーアドレス化
新型コロナウイルス流行よりも以前から人気を博していたスタイルです。メリットは固定されたデスクよりも気分転換が図りやすくなり、新しい発想や人脈が築きやすくなることとされていました。ほぼ自由席となるので、従業員それぞれが意識的にソーシャルディスタンスを保てる居場所を選択することができます。
・ホテリング化
フリーアドレスには唯一ともいえる欠点がありました。それは何となく「特定の人がいつも同じ場所にいる」状況を作り出してしまうこと。これだとせっかくのフリーアドレス化も本末転倒です。そこでフリーアドレスを進化させたスタイルがホテリング。オフィスレイアウトはフリーアドレス同様ですが、その日座るスペースは予約制とするのです。本来のホテリングは従業員自らが座席予約をするものでしたが、「特定の人の占拠」を防ぐためには責任者が割り振りをしてもよいでしょう。社内ネットワークやツールによる管理が可能だと理想的です。
また、これらデスクの配置に加えて、換気性の向上や動線のコントロールも導入できるとより完璧に近づけることができます。
入口と出口を分けたり、通路を一方通行化するなどし、日頃からソーシャルディスタンスをとりやすい設計にしておくことが大切です。
5.オフィスデザインのプロに依頼すべきか?
さて、いざデスク配置や動線を見直そう…となっても、簡単そうに思えますがやってみると意外と困難なことも多々あることも事実です。単純にデスクを動かす力仕事だけならば、社内で解決させることもできますが、どのようにスペースを有効活用していけばよいのかが問題です。まして、一度決めたレイアウトを再び構築するとなると、かなりのストレスになるはずです。
一言にオフィスでソーシャルディスタンスを図ると言っても、企業の規模や従業員数、間取りによってまったく必要事項が異なるのが一番の難点。現在オフィスデザイン業界では、社内のソーシャルディスタンスに関する依頼が最も多い状況です。
様々な規模のオフィスを手掛けてきたプロならではの見解で、貴社に一番ふさわしいレイアウトプランをご提案することが可能となります。DIYではトライ&エラーにより、スペースのみならず時間と費用までもを無駄にしてしまったという話もよくあるケース。
これからの季節に備えるためにも、ぜひお早めにデザイナーに相談してみてはいかがでしょうか。デザインの力によって、オフィスワーカーのみなさまの健康維持に貢献できれば幸いです。