リクルートの現場でも、人事担当者は外見だけで人を判断してはいけないとしつつも、服装や立ち居振る舞いから、求職者がどんな人柄なのかを想像しようとします。
では、求職者が見る、企業の第一印象はなんでしょう。もしかしたら、オフィスの「見た目」で企業のレベルを判断しているかもしれません。
優秀な人材は、どこの企業からも引く手数多です。優秀な人材を獲得できるプラスワン、「オフィスのデザイン」について考察します。
内定者の約半数が参考にしたオフィス環境
MYCOMオフィスアワード運営事務局が2006年8月24日~9月4日、2007年4月入社予定の内定者を対象に行った「オフィス環境に関する意識調査」によると、46.2%の内定者が就職活動の際、会社を選ぶ上で「オフィス環境を参考にしている」と答えたと発表しています。
さらに、オフィス環境で重要なものとして85%は「清潔感のある、不快感のないオフィス」をあげ、67%が「コミュニケーションのとりやすい環境」と答えたといいます。特に「オフィス全体の清潔感」「エントランス」が印象に残ったという声が多く、入社したくないオフィスには「不潔で印象に残り、こういうところでは働きたくないと思った」という辛辣なコメントです。
また、「就職するならどのような機能のあるオフィスが良いですか?」という質問に関しては、1位「バー・カフェテリアなどがあるオフィス」48.1%、2位「マッサージルームのあるオフィス」37.6%、3位「トレーニングジムのあるオフィス」31.2%となり、オフィスの中に業務以外のスペースやリフレッシュできる空間を求めていることがわかりました。
多くの求職者が、就業の条件や仕事の内容だけではなく、オフィス環境や見た目を重要視しているのです。
仕事ができればデザインは関係ない?
少し前の日本企業では、オフィスは雨風しのげて仕事ができれば良いという考えでした。向かい合わせの事務机に、オフィス内でも喫煙し、リラックススペースなどはありません。なぜ、最近になってオフィス環境に目を向けるようになったのでしょう。
それは、「働きやすさ」や「快適さ」が業務効率に大きく影響することがわかってきたからです。Googleや楽天、Microsoftなどでは、社員がクリエイティビティを発揮し、最適なパフォーマンスを実現できるように、オフィスの内装や機能、デザインを工夫しています。Googleのリフレッシュスペースやミーティングルーム、楽天やMicrosoftのスタンディングデスクの導入などは、生産性やコミュニケーション度を上げ、社員がモチベーションを維持しながら働けるように考えられたものです。
また、女性が活躍できる社会を目指している昨今、オフィス環境は重要です。「働きやすさ」がオフィスデザインに反映している企業では、女性の定着率は高くなると言われています。女性は、見た目の美しさやおしゃれ感で大きくモチベーションが変化します。
もし、優秀な引く手数多な人材が複数の企業から内定をもらった場合、同じ条件であれば、働きやすく快適そうなデザインのオフィスを選ぶでしょう。「ここでなら、コミュニケーションをとりながら質の高い仕事ができそうだ」と想像できるからです。
決め手はエントランスとリフレッシュスペース
では、求職者はオフィスデザインのどこを見ているのでしょう。
女性が入社を決めるとき、清潔感とエントランス、リフレッシュスペースだと言います。エントランスは企業のイメージを表し、リフレッシュスペースでは実際に休憩しながら他の社員とコミュニケーションをとっている姿が見えます。そこから、「このオフィスは働きやすいか、長く働くことができるのか、人間関係に問題がないか」を判断しようとしているのです。
リフレッシュスペースの有無で企業の雰囲気も想像することは、実は当たらずも遠からずと言えます。というのは、リフレッシュスペースを設けているオフィスは、コミュニケーション度が高く、人間関係の雰囲気も良好となっているからです。
また、リフレッシュスペースで休憩することにより緊張と緩和のバランスがとれ、そのスペースで休憩や雑談をすることで、デスクに座っていては出てこない意見やアイディアが生まれます。
そういった雰囲気を、求職者は見えているのかもしれません。
さらに、清潔感のあるトイレ、適度なパーソナルスペースを保っているデスクの配置、見た目のおしゃれ感を見ます。女性にとっては、清潔感やおしゃれ感はとても重要な要素です。上司から圧がかからない、ストレスのないデスクの配置も望んでいます。
優秀な人材は、オフィスのデザインで自分がこれから長く快適に過ごせる場所であるかどうかを判断します。そして、そのオフィスで自分の能力を最大限に発揮しようとしています。オフィスの見た目も、優秀な人材の印象に残り、最終的に選んでもらうために重要な要素なのです。
オフィスのデザインは、生産性や効率性を上げるだけではなく、企業のコンセプトや独自性を表すものでもあります。
求職者に、「この企業で働いてみたい!」と面談時に希望を与えるオフィスデザインでありたいものです。