1. はじめに
「あなたのオフィスには、働きやすい環境が整っていますか?」
オフィスのレイアウト、オフィスデザイン、家具の良し悪し、駅からの距離、階数、採光は?会社の人間関係は?
オフィスに関わるあらゆる要素を包括したこの大きな質問に、日本ではなんと5割近くのもの人が自信を持って”YES”と答えています。
日本のオフィスは働きづらい。なんて言われていますが、意外とそんなことないのかもしれません。すごいですね!
と思いきや、一方で
「オフィスの問題点はあるか。」
と聞き方を変えれば
「新しく取り入れたシステムが、気づいたら消えてなくなっている。」
「別部署でいつ何をやっているのか、イマイチわからない。」
「クリエイティブで生産的なオフィス空間になっているとは言えない。」
など、続々と意見が上がってきます。
働きやすいオフィス、生産性の高いオフィス、クリエイティブなオフィス。
そんな言葉が広く使われるようになってきましたが、それっていったいどんなオフィスなのでしょうか?
オフィスを働きやすく生産的にすると、どんな良いことが待っているの?
そもそも、そうする必要ってあるの?
その意義を探っていきたいと思います。
2. もくじ
- はじめに
- もくじ
- 生産性って?
- 私の仕事の進め方、通用しない?
- 働き方と生産性
- で、オフィスデザインです
3. 生産性って?
「生産性」
好んで使われる企業様が増えてきた印象です。
我々オフィスデザイン会社でも、「生産性を高めるオフィスデザインを〜。」なんてお話をよくします。
その範囲は非常に広く、意味するところは様々ですが、
従業員がどれだけの付加価値を生み出したかの「労働制生産性」であったり、
どれだけ知的生産物が生まれやすい環境であるかを現す「知的生産性」
なんかがオフィスデザイン界隈での主な使われ方ですね。
「従業員の生産性を最高レベルにまで引き出せるオフィスづくりをしたいです!」
というのが近頃のオフィスデザインの依頼、実施のトレンドであるわけですが、
それが声高に叫ばれるようになったのは、実はここ数年のお話。
それまでは面積を一人あたりの使用面積で割って、これだけの人数を詰め込めるから…なんて考え方が普通でした。
それが急激にシフトチェンジ。
なぜいま急に、生産性を高めようとする、従業員のためを思うオフィスづくりが増えているのでしょうか。
4. 私の仕事の進め方、通用しない?
その答えはすごく簡単で、
「日本が弱くなっているから。」
またその自覚を持っているから。
だと思います。
SNS新しいwebサービス、各種デバイスなど革新的なアイテムを生みだしイノベーションに力を発揮するアメリカ。
家電や自動車、プロダクトの生産コストや技術力で日本に水をあける中韓などのアジア先進国。
これまでの日本の強みであった「ものづくり」の力が通用しなくなっています。とはもう何年も言われ続けていることですが。
にも関わらず、これといっためぼしい強みも生まれてきていない。
そんな不安を持ち始め、「変わらなきゃ!」と日本全体が強く思い始めた。
その結果のひとつとして現れたのが「生産性の高い働き方にシフトチェンジしよう。」といった時流ではないでしょうか。
国際的な比較データにも、日本の生産性の低さは明示されちゃっています。
労働生産性は、アメリカは時間あたり日本の1.5倍。トップのノルウェーにいたっては2倍にもなっています。
自給1000円と2000円、国民全員がそうだとしたら大きな差ですよね。
労働生産性の上昇率をみると、アジア先進国は日本を大きく超える成長性を見せています。
中国の10.4%というのも恐ろしい数値ですが、
日本の上昇率0.4%というほうにも問題を感じます。
日本、生産性が低いんですよ。
5. 働き方と生産性
そんなことは何度も聞いて嫌気がさしていますし、ここでお話する意味もありません。
ポイントは、
「オフィスデザインで生産性ってホントに変わるの?」
という疑問点ですね。
答えとしては、変わるんです。
それも大幅に。
正しくDESIGNすることができれば。の前提でですが。
5-1. なんで低いの生産性
生産性が低いのならば、その原因をみつけオフィスデザインの観点から出来る部分を矯正してやれば良いだけの話です。
さて、生産性が低いのはなぜか。
日本が得意としてきた個人プレーの仕事の進め方では、世界に対して優位に立つことができなくなってきているからではないでしょうか。
ニーズ・市場の多様化、、IT台頭に代表される急激な働き方の変化、人材の流動化。
特定の個人の職人的パフォーマンスだけでは環境変化が加速しています。
そこでキモとなるのが、個人ではなくチームとしての生産性。
フェラーリのデザインで有名な奥山清行氏は『100年の価値をデザインする』の中で、現代の日本人は「チームで仕事をするのが苦手だ」と指摘しています。
これはたとえば、4名のチームでおこなう「◯◯のマーケティングをする」という命題があった場合、
Aさんは市場のリサーチ、Bさんは競合他社の調査、Cさんが…といったふうに、
プロジェクトをタスクに切り分け個人個人で分業して進めるというような部分を言っています。
個人がこなしたタスクをただ合体させるだけでは大きな価値は生み出せない。ということです。
5-2. 働き方を考えよう
チームプレーを促進させるためには、働き方のデザインが重要になってきます。
気づけば2015年、テクノロジーは素晴らしく進化しています。
ICTを活用すればデスク、会議室、収納庫全てを持ち歩くことが可能になりますし、遠隔地との会話は画面越しの電話で何も不都合がありません。
コーヒーを飲みながら思いついたアイデアは即時世界の裏側の同僚と共有し、関連ワードをあげディスカッションし…。
書面のやりとりはメールからSNSに移行。流れを把握しやすいタイムタインには「いいね」と途中からでも参加できるし、メンバーのやりとりを若手が見て成長する機会も多く得られます。
テクノロジーを駆使すれば思いつく限りのほぼ全ての働き方を実現できる時代ですので、
最適でもっとも生産的に働ける方法を十分に検討し、ルールを社内で統一し、効率よく運用することが重要です。
そして一度つくりあげた働き方は継続し、改善を続けていかなければ高効率な環境を維持することはできません。
会社にあった、最適な働き方を考えること。
それがオフィスデザインのスタートであり、その働き方を実現させることがオフィスデザインです。
5-3. 働き方を考えます
企業としての目的や展望から見出したこれしかない!っていうベストな働き方。
を、実現させるためにオフィスのレイアウトや意匠設計、使用する家具や設備の検討をしていきます。
たとえばオフィスの面積をみると、会議室エリアは全体の20%程度が標準であり、15%を割ると会議室の不足を顕著に感じるようになります。
とはいえ5%程度でも充分だと回答される企業様も、25%以上をとっても不足であると感じる企業様もあり、
それぞれの会社にあった専有面積を十分に検討する必要があることがわかります。
働き方を十分に検討した結果、会議室は不要。なんて答えが出ることもあるでしょう。
大きさや数から見ても、実際に使用するのは9割方が6名規模までの会議です。
30名規模のものを使うのは年に1~2回程度。
年間のほぼ全てが遊びになってしまっているのであれば、その機能は外部に移してしまったほうがいいかもしれません。
デスクサイズひとつをとってもサイズはさまざまですが、実際に使われている面積はどれであってもほとんど変わりません。
であれば、業務においてはサイズダウンも検討の余地に入ります。
個々の空間を広くとりリラックスした状態で業務に集中する必要のある職種、エンジニアなどでは広めのデスクが活きるかもしれません。
その他にも、会社にとって本当に大事な立地を見極めること。
ICTを活用して出張回数を減らすこと。ペーパーレスを促進させるといった手法で無駄なコストを抑制すれば、オフィス生産性はずっと向上します。
6. で、オフィスデザインです
どんな働き方が理想的かといった働き方のデザインを徹底し、必要な機能を過不足なく実現したオフィス。
そんなオフィスに企業ごとの理念や展望を具現化した意匠設計を施すことで、
人はなぜだか大きくモチベートされます。
自分の働き方に最適で快適な環境で働くことで、その環境ごと会社を好きになる。
自分の好きな会社を感じながら働くことが無意識にモチベーションを向上させ生産性を向上させる。
オフィスデザインは、そんな環境づくりのお仕事です。