オフィスデザインは労働環境に大きく影響します。労働環境を向上させることで、作業効率や離職率の低下に貢献するといいます。また、企業の発展は、旧来の枠にとらわれない自由な発想が必要です。このことから、旧来のオフィスデザインを見直し、働きやすくストレスがたまらないデザインが推進されています。 今回は、クリエイティブな発想を促すオフィスデザインはどのようなものか考察します。
経産省が推進クリエイティブ・オフィス政策
経済産業省は2007年より「クリエイティブ・オフィス推進運動実行委員会」を設置し、個人の能力の質を向上させるためのオフィス環境を推進しています。個人の能力を発揮できる環境を整えることで、企業の活動を活発化させ、競争力の向上を目指すものです。
この普及推進により、オフィスデザインが、個人の発想力や従業員同士のコミュニケーションの向上に影響することは徐々に広まっています。 しかし、クリエイティブな業務を行う企業に広まりを見せている一方、オフィスワーク中心の企業や中小企業では重要視していない、または知識がないために着手できないという企業も少なくありません。
クリエイティブな発想が企業活動に必要であることは、どんな業種でも同様です。製造業における生産管理部門やコールセンターにも、クリエイティブな発想ができる環境があれば、より効率的でストレスをためないアイディアを提案することができるでしょう。
クリエイティブな発想ができる環境は、クリエイティビティな業務を行う企業だけに必要なものではないのです。
アイディアが生まれやすくなるオフィス3つのポイント
では、クリエイティブな発想が生まれるオフィス環境とは、どのようなものなのでしょう。
前述の経産省の「クリエイティブ・オフィス推進運動実行委員会」では、3つのポイントを挙げています。 ひとつは、「コミュニケーションの活性化」です。部門を超えたコミュニケーションは、情報交や暗黙知の共有と交換が行われます。それらが発想のヒントとなり、創造活動の基盤になるといいます。
次に、「モチベーションの向上」が挙げられます。仲間やライバルの行動や仕事の成果が、適度に見えることで新たな刺激が生まれ、やる気を高めることが可能です。 3つ目には、企業活動の「スピードアップ」をあげています。プロジェクトの課題や進捗状況などの「見える化」や、臨機応変なコミュニケーションは、問題解決の迅速化が可能です。問題を共有し、対策を発信できる環境があることで、企業活動はより良い方向へスポード感を持って進むことができます。
これら3つの相乗効果により、企業や個人の価値が上がり、さらにモチベーションアップ、発想力は向上します。 オフィスデザインを行う際、「コミュニケーション」「モチベーション」「スピードアップ」を考えることで、企業活動を活発化させるアイディアを生む、オフィス環境を構築することができるのです。
業種によって様々。ノンテリトリアル・オフィスやフリースペース
3つのポイントを押さえたオフィスデザインを構築する際、考慮しなければならない点に「業種」があります。
すべての業種に、コミュニケーション重視のデザインが最高というわけではありません。ひとりで集中した作業が必要な業種と、常にチームで行動する業種とでは、オフィスデザインも変わります。
例えば、デザイナーやプログラマーなどは、制作に入るとひとりで集中できる環境が必要です。しかし、アイディアが生まれるまでは、発想力を高めるための雑談やリフレッシュも必要となります。
デザイン事務所やIT企業などの多くが取り入れている、ノンテリトリアルやフリーアドレス制のデスク配置は、それぞれの作業内容によって席を移動することができます。 柔軟に対応できるデザインにすることで、アイディアが出やすく、業務にも集中しやすい環境を作ることができるのです。
反対に、チームワークを重要視する業種の場合は、オープンなデザインであることが必須です。業務の進捗状況やトラブルなどをいつでも共有できることで、日常業務の中で自然と報告・連絡・相談ができる環境となり、問題解決もスムーズです。
仕切りをガラスにする、デスクの配置を工夫するなどの他に、上司の席を敢えて設けずに、相談があるスタッフが上司を呼ぶという方法を取っているオフィスがあります。 こうすることで、スタッフは呼びつけられるよりもリラックスして、問題やアイディアを相談することができるといいます。上司や管理者の考えや行動を変えることも、クリエイティブなオフィス構築に大切な要素です。
また、全ての業種に必要とされているのが、フリースペースです。フリースペースは、部署やチームを超えた雑談やコミュニケーション、適度のリフレッシュや昼寝をすることができるスペースで、新しいアイディアを生むためにあります。サボる場所ではなく、アイディアが生まれる場所なのです。 フリースペースを一つ設けただけでも、オフィスの環境は大きく向上するでしょう。
クリエイティブなアイディアは、クリエイティビティな業種にだけ必要なものではありません。クリエイティブな発想は、企業の問題を洗い出し、課題を解決するためのアイディアを生みます。新しいアイディアは、企業の発展を担うものかもしれません。
また、アイディアは生まれただけでは発展がありません。発言できて共有することで初めて価値が生まれます。発言しやすいオープンな企業づくりも、デザインとともに必要だと言えるでしょう。