1. はじめに
「オフィス移転の担当、任せたから。」
「4ヶ月後に引っ越しね。」
突如オフィスの移転プロジェクトの担当者に任命されてしまった。
そんなこと言われても、なにから手をつけていいのかわからない。
どうしたら成功するのか。
そもそも成功ってなんなんだ…。
ーー
よほど勢いのある会社でもない限り、そうそう何度もオフィスの移転をするものではない。
「オフィス移転?経験があるから私にまかせて!」なんて人は、ほとんど稀にしかいないのだ。
そもそも会社として移転が初めてのため、誰も頼れないというケースもあるだろう。
1000万単位で費用が動くこともあるオフィス移転。
大きな金額が動くだけに絶対に失敗させたくないものではあるが、どのように進めたらいいのか皆目見当もつかない。
オフィスデザイン会社として、いままでそんな担当者を何人も目にしてきた。
そこでこの記事では、あなたのオフィス移転を成功に導くために、
オフィスデザイン会社に発注する前に準備しておくべき事柄を具体的にお伝えする。
それも、数多くのオフィス移転を担当したオフィスデザイン会社の視点からみた
「これを準備しておいてもらえると、意志の疎通をスムーズに、最高のオフィスをつくりあげられるんですよ。」というノウハウだ。
つまりそれは裏を返せば、「依頼前にこれだけやっておいて欲しいです!」という私たちオフィスデザイン会社からのお願いごとでもある。
世界に一つだけの、あなたの会社に最適で理想的なオフィスをつくりあげるためには、
我々と依頼主と、お互いにスムーズに余計なストレスなく移転にまつわる仕事を進めなければならない。
そこに余計なノイズがあればあるほど、その解消に追われ100%の成果から遠ざかってしまう。
事前に準備できるものはしておいて、ポジティブで建設的な仕事に集中したい。
依頼主との関係を良好に、良いものを生み出したい。
そんな私たちからのお願いごとだ。
少々ボリュームは多いが、ひとつひとつ丁寧に読みそのまま実践してみてほしい。
そうすれば一年後のあなたが、理想のオフィスで快適に、バリバリ働いていることをお約束する。
2. もくじ
- はじめに
- もくじ
- オフィス移転全体の流れ
- 要件定義をつくろう
- 数字で出す要件定義
- 数字以外の要素
- 目的と目標を設定する
- デザインイメージを考えよう
- デザインイメージを考える
- ツールを活用する
- 考えがまとまったら、いよいよ行動!
- ロケーションの選定
- デザイン会社の選定
- デザイン会社決定にあたり
- まとめ
3. オフィス移転全体の流れ
まずはオフィス移転の依頼前にするべき大きな流れをざっくりと知ろう。
ステップは大きくわけて3つ。
- 要件の策定
- ビルの選定
- デザイン会社の選定
たったこれだけ。
この3つをしっかりと確実にこなせばオフィス移転は成功したも同然だ。
4. 要件定義をつくろう
オフィス移転の担当になったらまず最初にすること。
それが具体的な要件定義の制作だ。
あなたが働く会社のことを調べあげて、新オフィスに必要な要素をはじき出すのだ。
4-1. 数字で出す要件定義
現状で社員が30人、新規採用予定も含め50席を用意。
会議室は6名規模、8名規模、12名規模の3種。
8名規模の応接室をひとつ。
リフレッシュスペースが必要で……。
業務内容や将来の展望から、数字で書き出せる要素を書きだそう。
Excelや、Googleスプレッドシートなどに、下図のように理由も含めまとめておくとわかりやすい。
表イメージ
理由も含めてしっかりとまとめておいていただくとさらに◎
—30名規模の会議室が必要なんです。
「使用が年に数回程度ならば、貸し会議室を利用するほうがコストパフォーマンスに優れますね。」
—社員は30名なのでそのくらいの数のデスクは欲しいな。
「常駐は15名くらいで、営業さんは出ずっぱりなんですね。なら数は少し減らして広くとり、フリーアドレスデスクにしたほうがいいかもしれないです。」
「なぜそうしたいのか。」が明確にわかれば、我々オフィスコンサルの視点からのスムーズなアドバイスが可能だ。
4-2. 数字以外の要素
しかし、数字で出せる部分だけではまだ足りない。
自分の会社にどんな要素がどれだけ必要かを明確にしたからといって、
それを伝えるだけでは良いオフィスは生まれないのだ。
先ほどの要件定義とは、
ようけんえう―30【要件】
必要な条件。欠くことのできない条件。
「必要な―を書き込む」
を定義することだ。
たしかに、欠くことのできない条件をすべて満たしたオフィスには100点を与えられる。
しかし、100点のオフィスはダメなオフィスだ。
訪れた人に感動を与えるプレゼンテーション性。
快適でストレスがない、働き手に最適な空間。
モチベーションを大幅に上昇させるには。
社員同士のコミュニケーションを増幅させ新たなアイデアを誘発する仕組み。
あなたの会社の将来の展望などから逆算し、どんなオフィスにするべきなのかを考える。
移転担当者のあなたは、
あなたの会社に最適な、150点200点のオフィスをつくりあげなければならないのだ。
4-3. 目的と目標を設定する。
つまり、
「いまの事務所が手狭になったから移転する。」
きっかけはそうであっても、それが目的になってしまってはもったいないのだ。
せっかくの新規オフィス、いままでのオフィスよりもよりよいものにしなければ意味が無い。
働き方を考え、業務効果を倍増させ、
社員同士のコミュニケーションを促し、
来訪者へのプレゼンテーション効果を考える。
心機一転のめったにない機会、さまざまな目的を設定可能だ。
いままでのオフィスに足りない部分、理想としてきた部分を思い描いてほしい。
5. デザインイメージを考えよう
なにがどれだけ必要か。
働く人に、来訪者に、どういった行動を期待しどのような感動を与えたいのか。
あらかたまとまったら、いよいよデザインイメージを考えてみよう。
5-1. デザインイメージを考える
これまで内容を頭に入れたうえで、世界中のさまざまなイケてるオフィスをみてみよう。
同じ「こんなオフィスにしたい!」という希望であっても、いままでとは少し違う目線で見られるはずだ。
さまざまな事例をみたら、それを簡単にまとめてみよう。
そうしてあつまったオフィスデザインの事例。
先に打ち出した要件定義。
考えていただいた目標設定や企業の展望などの要素から共通項や重要要素を拾い上げ、
心の奥底で求めている、最適なオフィスをお届けすることが可能だ。
明るい色あいか、落ち着いた色あいか。
モダンにいくのか、和風によせるのか。
木などで柔らかい印象をあたえるか、金属などでズッシリした重厚感をだすか。
なんとなくでいいので、頭のなかに思い浮かべてまとめてみよう。
オフィス移転の諸々を通じて、自分の会社について今まで以上に深く考えてこれているはず。
「なぜ」そのテイストなのかもしっかりと根拠づけて考えられるはずだ。
5-2. ツールを活用する
世の中には、さまざまな便利なツールが数多くあふれている。
そういったテクノロジーを有効利用するのも、成功へ導くための近道だ。
例えばオススメのひとつがpinterest。
クリックひとつでお気に入りの画像をまとめることが出来るこのサービス、オフィスデザインの資料集めにももってこい。
将来働きたいオフィスの例を集めて一覧で見せていただければ、言葉にしづらい理想像も一目瞭然。
その好みと様々な条件からお客様ごとに最適なオフィスを産み出すのが、我々オフィスデザイン会社の仕事だ。
6. 考えがまとまったら、いよいよ行動!
前準備はここまで。
ここからはオフィスデザイン会社の担当領域になるので、
あとは楽しみながらオフィス移転を進めよう。
要件定義をまとめ、目標設定をし、イメージを思い浮かべたら、
あとはオフィスビルとデザイン会社を選び、オファーを出すだけだ。
はじめにしっかりと必要な要素を叩きだしておけば、非常にスムーズなプロセスで高品質の設計を実現できる。
6-1. ロケーションの選定
新オフィスに最適なビルの選定をしよう。
初期費用、ランニングコスト、広さ、場所…さまざまな要素がありついつい迷いがち。
だが、これまでしっかりと移転について考えてきたのであれば、なにも迷うことはない。
どんなビルなら自分たちに合うのかがハッキリとわかっているはずなので、
不動産会社やwebサイトを巡って新オフィスにピッタリなビルに出会うだけだ。
もちろんビル選定をオフィスデザイン会社に任せてしまっても構わない。
一般に出ている情報だけじゃない、独自ルートからのお得で最適なロケーション選定も可能だ。
6-2. デザイン会社の選定
オフィスデザイン会社の選定をしよう。
webサイトなどから、事例や考え方をみて、
「ここならいいかも。」と思える会社をピックアップしよう。
いきなり「ここしかない!」と、一社に決めてしまってもかまわないし数社に依頼をかけコンペ形式にしてもいい。
とはいえ数が多すぎても決めきれない。どの会社も素晴らしい実績と考え方のもとプライドをもってオフィスデザインに携わっている。
3社程度、多くとも6社ほどで充分だろう。
万一結果に納得がいかない場合も、セカンドオピニオンとして他社の意見を聞いてもいい。
6-3. デザイン会社決定にあたり
コンペ期間を経て、さまざまな要素を複合して一社に絞り込もう。
デザイン性、コスト、レスポンスの良さ、どれだけ親身になってくれるかなど、選ぶ基準がたくさんあり迷ってしまうかもしれないが、
ポイントはシンプルにたった一つ、
「この会社と一緒に仕事ができるかどうか。」
それだけだ。
デザインもコストも、それぞれ違ってもどの会社も高品質の素晴らしいものを出してくる。
違いがないとは言わないが、天と地ほどの大きな差はないし、それは後からでも調整できる。
長く付き合うことになるオフィスデザイン会社。
コンペ期間は、共に働いて大丈夫かどうかを見極める期間なのだ。
7. まとめ
以上がオフィス移転の準備段階でのおおまかな流れだ。
- 要件定義
- 目標設定
- ビルとデザイン会社の選定
この3つを事前にしっかりと準備するかどうかで、
いただいた情報、聴きだした情報を元に整理整頓し、
最適な答えを組み立てるのが我々オフィスデザイン会社の仕事だ。
当然ながら、事前情報の質が高ければ高いほどをの答えの精度も高くなる。