1. はじめに
「いまのオフィスが手狭になってきたし、
なんか最近GoogleやAppleやイケてるオフィスを見かけるし、うちも移転したいですねえ。」
よっしゃやったろう!みたいなぶっ飛んだ経営者、なかなかいないですね。
とんでもない金額に時間に社員の業務を割いて、オフィス移転って本当にたくさんのコストがかかるんです。
経営者からしたら、ちょっとどころじゃなく慎重になるべきものです。
とはいえ必要に迫られて急いでやるよりも、できれば早いうちから未来を見据えて戦略的に進めたいものです。
そしてそこにはそれなりの効果があるもの。
社員のモチベーションがあがったり、そこから生産性が向上したり、
リクルーティングや勤続年数、来訪者へのプレゼンテーションにも影響大です。
いいオフィスと働き方をネットで公開すれば働きたいって人も増えるものですし、
イケてるオフィスでミーティングなんてなったら顧客の印象も良くなることうけあいです。
…ということをなんとなく分かっていながらもなかなか一歩を踏み出せない。
その理由は、こんな疑問が頭にあるからじゃないでしょうか。
「オフィス移転、本当にコスト分の効果あるの?」
働き方を変革し、社員同士のつながりを深め、よりよい環境で働きたい。
そのための最初のステップが必要な投資予算を通すこと。
もしもはっきりと「働き方を変えることで△年で◯億円分の効果が予想されます。」
なんて経営陣や部門のトップに進言できれば。
戦略的によりよいオフィスで働こうと考える経営者もいるかもしれません。
今回はそんな、定量化しづらいオフィス移転への投資対効果を金額換算で見える化するノウハウをご紹介します。
2. もくじ
- はじめに
- もくじ
- 投資対効果算出法
- まとめ
3. 投資対効果算出法
今回紹介するのはネットワンシステムズが編み出したワークスタイル変革のROI(投資対効果)算出法です。
2009年からワークスタイル変革に着手した同社は、フリーアドレスやモバイルワークの導入に取り組んできました。
その効果を定期的に検証し、定量的にROIを算出しています。
そのノウハウをみていきましょう。
ネットワンシステムズがROI算出に使う指標は以下の5つ。
- CAPEX (Capital Expenditure、設備投資額)
- OPEX(Operating Expense、運用コスト)
- リスク管理
- 生産性
- イノベーション
これらを金額の単位に換算して評価・予測していきます。
3-1. CAPEX
CAPEXについてはわりと簡単に算出できます。
たとえばフリーアドレス制を導入した場合はオフィススペースが削減され賃貸費用の増減分が。
モバイルワークを導入してデスクトップパソコンを撤廃、ノートPCを導入した場合には、その資産価値の差額がCAPEXになります。
3-2. OPEX
OPEXはまず現在の仕事の仕方を洗い出し、ワークスタイル変革で削減できる作業コストを積み重ねていって算出します。
例えば移転を機にウェブ会議システムを導入したら、従業員がオフィス間を移動する回数をどれだけ減らせるかが試算できます。
そこに交通費、社員の移動時間分の給与を掛けあわせて計算できます。
資料を電子化しペーパーレスを導入すれば、紙やトナー代に印刷機の保守費用はもちろん、
印刷にかかる時間なども減らすことができます。
この2つは設備投資と運用費として一般的に用いられている項目であるため、そこまで苦労せず算出できますね。
3-3. リスク管理
3のリスク管理は難しいですが、こいつを押さえると移転やワークスタイル変革の説得力がグッと増します。
東日本大震災後の計画停電によって出社できなくなったビジネスパーソンが続出したのは記憶にあたらしいところ。
そんな際に在宅勤務のシステムが導入されていれば、すべてとは言わないまでも0になるはずの営業機能をカバーできます。
ほかにも例えば、インフルエンザにかかった場合、ほぼ治っていても医師から許可がでるまで出社できないですね。
そんな場合も在宅勤務できる環境を整えておけば、出社しなくても仕事が進みます。
これらの効果を算出する場合、まずは全従業員が何らかしらの理由で「働ける状態であるのに出社できない」日数を積みあげます。
この日は「本来得られたはずの売上が得られなかった」わけですから、全労働日数に占める休業日の割合を年間売上高に掛けます。
ネットワンシステムズの場合、1人あたり年2日の前述のインフルエンザでの休業日があり、これによって失った売上は6億円に相当したそうです。
在宅勤務のインフラ投資を正当化したい場合、この数字はかなり説得力を持つのではないでしょうか。
3-4. 生産性
生産性とは「同じことを行う場合にどれだけの時間で実施できるか」を金額換算したもの。
ある仕事に対して現在のシステムでかかる時間と、変革後のシステムでかかる時間の差を出し時給に換算すればOKです。
たとえばウェブ会議を導入した場合、交通費や出張旅費そのものではなく、移動にかかる時間を割り出して時給に置き換えます。
モバイルワークの導入も同じように通勤・移動時間の削減を時給に換算します。
3-5. イノベーション
イノベーションは金額換算が難しいです。
経営戦略に対する貢献度に重点をおいて
「売上高・受注がどれくらい向上しているか」
「社員満足度調査の結果、どれくらい向上しているか」
「移動時間が減り顧客との接触時間はどれほど増えたか」
「移転で良いオフィスになり自社イメージの向上を果たせたか」
「働きやすい環境が整ったことで、社員採用時の応募はどれほど増えたか」
といったさまざまな指標を定義しその効果を算出していきます。
いずれも簡単には、数値化できないものばかりですが、このROIを含めないと真の価値は見えてきません。
なぜならワークスタイル変革は経営戦略であり、継続的に設定しなければいけない項目であるからです。
4. まとめ
という感じで、オフィス移転やワークスタイル変革の効果を金額ベースではっきり示ちゃえば、
投資予算を通すかどうかの決断がグッとしやすくなります。
つまりオフィス移転を考えた段階で、はっきりした意志を持って「こういう目的の上で移転したい」と言えるようになります。
「手狭になったからもっと広いところに移転したい。」だけって、実はとってももったいない行為なんです。
「より良く働き方を変えるためにオフィス移転が必要ですが、
移転費用とワークスタイル変革の導入費を差し引いても△年で◯億円分の効果が予想されます。」
なんて具体的な数字とともに戦略的な投資としてみていただければ、合意も得られやすいのではないでしょうか。
社員数が増えすぎて現在のオフィスビルを追い出される前に、意図を持って移転について考えていきましょう。
意図を持ったオフィス移転に対しては私達もデザインアイデアを出しやすく、超イケてるオフィスをつくれちゃいます。
なんて副次効果も期待してください。