2020年に向けてのオフィス移転、どうなっていくの?

25 JUL 2015

1. はじめに

これからのオフィス移転を、オフィスビルの面から考えてみます。
近い将来のオフィスビル市場の需要や需給バランスはどうなっているのでしょうか。
ここでは定性的なニーズではなく、定量的に予測しようと思います。

2. 20年間で生産年齢人口が17.1%減少

オフィスに対するざっくりとした需要量は「オフィスワーカー数」×「1人あたりのオフィス床面積」で試算できます。
「オフィスワーカー数」は長期的には生産年齢人口(15~64歳)を反映するため、人口動態から比較的精度の高い長期予想が可能です。「一人あたりオフィス床面積」はオフィスに求められる機能やワークスタイルといったニーズに応じて変化します。たとえばフリーアドレス型オフィスや在宅勤務が増えれば、1人あたりのオフィス床面積は低下します。一方、付帯施設(社内託児所・食堂・交流スペースなど)の増加は逆の影響を及ぼします。

これらを前提に、生産年齢人口とオフィスストックから、近未来のオフィス需要お呼び需給バランスを試算し、オフィス移転の動向を探ってみます。
結論から言えば、今後長期にわたって生産年齢人口の減少が確実なため、オフィス需要は現状より低下する可能性が極めて高いです。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本全体の生産年齢人口は2010年の約8173.5万人から、2030年には約6773万人へ、20年間で17.1%の減少が予想されています。
生産年齢人口の流入が期待できる東京都でも、2010年から2030年にかけての生産年齢人口はまいなうs 5.6%と予想されています。オフィスワーカーの就業率や1人あたりのオフィス床面積が生産年齢人口の減少を補うペースで増加すれば別ですが、オフィスに対する需要量は長期的には減少が続くものと予測されています。

3. 毎年、六本木ヒルズタワー3棟分のストック増加が続く

需要の長期減少傾向に逆流して、オフィスストックは増加傾向が続いています。
『オフィスレントデータ2104』(三幸エステート刊)によれば、2013年末における大規模・大型・中型ビル(基準階面積50坪以上)のオフィスストックは、東京23区で1144万坪。2009年以降の4年間は解体による減失分を差し引いたネットベースで年間平均17万坪の増加を記録し、2014~2016年までの3年間では合計60万坪の新規供給が予想されています。
オフィス需要が減少傾向にもかかわらず、東京の賃貸オフィス面積は減少どころか、年間平均20万坪のペースで増加していくものと思われます。これは、毎年六本木ヒルズタワー3棟分の貸室面積を上回るペースでストックが増えつづけるということです。
既存建物解体によるストック減少や新規供給上振れによるストック増加、自社ビルの動向などにも留意する必要はありますが、しばらくはオフィスストックが増加し続け、オーバーストックの傾向が長期化する可能性が高いです。

4. 解体技術が高層ビルの建替えやオフィス移転を後押し

さらに今後、東京のオフィスビル供給を後押しする要因として「建物解体技術の進歩」があります。これによって、主要ビジネス街における超高層ビルの再開発が本格化する可能性があります。
たとえば、都市再生特別地区に指定された大手町地区では、都市再生プロジェクトとして連鎖型再開発事業が進んでいます。今後も主要ビジネス街では、築年数の経過した超高層ビルの建て替えを景気に大規模再開発が進むでしょう。ちなみに2030年には、1970年代に建てられた初期型超高層ビルが築50~60年に達します。建て替え予備軍はかなり多く、すでに連鎖型再開発事業にともなって解体された「りそな・マルハビル」は1978年竣工。再開発計画を発表している浜松町駅隣接の「世界貿易センタービル」も1970年竣工です。
建て替えを含む再開発事業では、容積ボーナスなどの制度面インセンティブインセンティブが事業化のカギを握ります。国家戦略特区などどにより制度面の整備が進み、建て替えが本格化した場合、最新スペックの超高層ビル群がさらに建物面積を増やして供給されることになるでしょう。そうなれば、オフィスストックの増加は現在よりも加速する可能性があります。最新スペックのAクラスビル同士の集客競争も激化し、賃貸料の定価などオフィス移転にとっていい影響もあるかもしれません。

5. オフィスの過剰が住居系や商業系への用途転換を促す

すでに東京都新3区(千代田区、中央区、港区)でもオフィスの過剰化は顕在化しつつあります。老朽ビルの建て替えに伴い、オフィスからマンション等への用途変更を行う事例も少なくないです。これが居住人口の都心回帰を後押ししています。
ビジネスエリアの居住人口増加に呼応して、都心部にも食品系スーパー(成城石井、マルエツ、プチ、リンコス、KINOKUNIYA、entreeなど)が続々と進出しています。こうしたリアル店舗の増加に加え、ネットスーパーの普及で生活するには不便だった都心が、「職住近接の住みやすい場所」に変化しつつあります。

6. Aクラスビルはアジア諸都市の同等ビルと競争に

東京都でされ生産年齢人口が2010年を境に減少に転じたように、将来のオフィスビル市場は相当に厳しい状況が予想されます。
現状の趨勢シナリオでは、これまでのように中長期的にhあ需要拡大が見込める状況ではなく、需要縮小という新たな前提条件での競争もおこりえます。加えて国内市場の需給バランスだけでなく、グローバル・リージョナルな都市間競争も激しさを増しつつあります。
特に多国籍企業をテナントとして抱えるAクラスビルは、アジア主要都市のAクラスビルがライバルになります。シンガポール、上海、ホンコンなどのアジア主要都市に対して、東京の競争力や魅了に見劣りがすれば、多国籍企業の需要流出でオフィスのオーバーストックに拍車がかかることとなります。
これからの時代のそういった状況も踏まえた上での、最もパフォーマンスの良いオフィス移転計画をたて、企業価値を高めていく必要があります。